「ODA民間モニター」参加レポート
静岡県立吉原工業高等学校 教諭 秋山満代
今年、7月21日から28日にかけてODAの現場視察のため、インドネシアを訪れました。
日本のODAはインドネシアの人々の役に立っているのだろうか?無駄に使われていない
だろうか?
現地の人々の話を聞き、私自身の眼で確かめて来たので、ここに報告します。
視察案件1 カマラ・ムアラ村に対する共同井戸設置支援計画(無償援助)

ジャカルタ市街から車で約一時間移動した所にカマラ・ムアラ村はある。海の幸で生計を
営む小さな漁村だ。ジャカルタ市内のビル街とは全く異なる風景に驚く。防波堤のない
海岸線に、真っ黒な暗い海が広がっている。この村に日本の無償資金援助により、共同井戸
が設置されていた。それにより生活用水を確保することができ、以前に較べ人々の暮らしは
楽になったと実感できた。しかし、課題はまだまだ残っている。第一に、いまだに生活用水が
確保できていない隣組がある。第二に、生活用水は確保できても、飲料水は別に購入しなければ
ならない状況にある。井戸水を浄化するフィルターが設置されれば、飲料水として利用できる
のだが、フィルターの設置はされていない。そして、各家に生活用水を供給するホースは地上
に剥き出しのままで、すぐに壊れてしまうように見えた。給水面での改善も望まれる。
視察案件2 ジャカルタ漁港リハビリ事業(有償資金協力)
有償資金協力いわゆる円借款により建設されたジャカルタ漁港は、インドネシア最大の漁港
である。水産加工施設も整備され、多くの雇用を生み出した。特に女性の雇用が拡大された
ことは注目に値する。この漁港を作るために、日本人技術者が情熱を持って取り組んでいる
姿を拝見し、非常に感銘を受けた。ODAを最大限に活かすためには、その国を心から慈
しみ、その国にとって最も良いものを作ろうという心意気が必要であると感じた。今後の
課題は、現地の人がこの漁港を維持・管理できる体制をしっかりと構築することである。

↑写真はジャカルタ漁港の水産施設の汚水処理施設
一見すると、ここが汚水処理場には見えない。敢えて目立つ所に処理場を設置し、
デザインや植栽にも気を配っている。水産施設から出る汚水の約半分を処理し、
きれいな水にして海に戻している。
視察案件3 ジャワ島中部地震被災地域における一般家屋の耐震構造普及計画
ジャワ島中部地震では、ほぼ同規模の阪神淡路大震災と比較すると、多くの家屋が倒壊
していた。それは家屋の多くが、ただ煉瓦を積み上げただけの造りで、耐震構造を備えて
いなかったからである。そのため、一般家屋の耐震対策を普及する活動を無償資金協力に
より実施している。耐震構造のモデルハウスを作り、大工を対象に講習会を開くなど地道
な活動を行っている。このような普及活動が実を結ぶことを願いたい。

↑ガルーダ国内線でジャカルタからジョグジャへ移動

↑耐震構造のモデルハウスの前で写真撮影
視察案件4 ジャワ島中部地震復興支援計画(無償資金協力)
地震で倒壊した保健所や小学校・中学校の建設も無償資金協力により建設
されている。私達が訪れた小学校・中学校は完成間近だった。生徒達は仮校舎
で授業を受けていた。十五分もいると汗が流れてくる。涼しい新校舎に早く
移って勉強したいと、生徒全員が願っていた。未来を生きるインドネシアの
子供達を、新校舎は見守り育ててくれる、そんな気がした。

↑住民でにぎわう保健所
圧倒的に女医さんが多い。保健所には多くの女性
職員が働いていた。

↑保健所で検診を受ける母子
持参していた母子手帳は日本の制度を導入したもの

↑仮校舎で勉強する中学生

↑折り鶴のプレゼントに喜ぶ小学生
視察案件5の1 ボロブドール及びプナンバナン考古学公園(有償資金協力)
ボロブドール、プナンバナンの遺跡を保護と観光価値を高めるため、有償資金協力で
周辺に公園が整備されていた。観光客は確実に増え、ホテルや土産物屋も利益が増し、
周辺住民の生活水準も上がった。


ボロブドールの遺跡にて
視察案件5の2 考古学局文化財修復機材整備計画(無償資金協力)
プナンバナンの遺跡は地震により大きな被害を受け、危険な状態にある。卒塔婆と呼ばれる
小塔のいくつかは、石が崩れ、斜めに傾き、今にも全壊しそうである。その修復のための足場を
組む援助を無償資金協力によって行っている。しかし修復作業は遅々として進まず、もどかしい。
文化的に重要な遺跡だからこそ一刻も早い修復を願う。

↑石をパズルのように組み合わせた遺跡

↑地震のため崩れて地面に落ちてしまった小塔
視察案件6 ジャワ島中部地震復興支援プログラム青年海外協力隊(技術協力)

↑地震により倒壊した家屋復興は進んでいるが、一部は瓦礫が
そのまま残っている。

ピンクの上着を着ている二人が協力隊員
↑青年海外協力隊が訪問看護するお宅の前で
地震によって寝たきりになってしまった村人を青年海外協力隊の隊員が一生懸命手当
をしていた。温かい気持ちはずっと記憶に残る。いくら資金を投入しても、気持ちが
込められていなければ、いつかは忘れ去られてしまうだろう。援助の真の姿を見た気
がした。
視察案件7 メラピ山緊急防災計画(有償資金協力)
雲が流れ、その隙間からメラピ山が顔を出す。メラ(赤い)・アピ(山)。噴火を繰り
返すメラピ山は、人間の微力さを笑っているかのように堂々としている。メラピ山の
火砕流や土石流を食い止めるために、円借款により砂防ダムが建設されていた。砂防ダム
の役割は大きい。村人の命と財産を守る他、ダムに体積した土砂は天然資源となり、砂利
採掘の仕事は村人の生活を潤していた。
↓雲間から顔を出すメラピ山

↓砂防ダムに堆積した土砂は天然資源
視察案件8 マングローブ保全現場プロセス支援(技術協力プロジェクト)
マングローブ林の中の遊歩道を歩く。マングローブの根元には、たくさんの潮招きが生息
している。展望台に登ると、思わず深呼吸をしたくなるほど気持ちが良い。これらのマング
ローブを保全するために技術支援が行われている。
しかし、残念なことに、マングローブの林はごみが散乱していた。川の上流と海の両方から
ごみは流れてくる。
環境教育はマングローブ情報センターで実施している。人々に浸透しつつあるが、行動に移
せないという。公共心を養う教育が早期に必要であると感じた。
視察案件9 バリ海岸保全事業(有償資金協力)
バリ島はインドネシア観光の目玉である。そのバリの砂浜が海岸浸食により消失しつつあり、
円借款によりその復元事業を行っている。バリ島の美しいビーチが日本の援助で守られている
ことを、初めて知った。


まとめ
今回の視察で多くの日本人技術者や青年海外協力隊の若者が活躍していることを知った。
ODAを真に活かすのは人の力であることを再認識した。このことを一人でも多くの
生徒達に伝え、世界に目を向けて行動できる若者を育てる教育をめざしたい。

↑夕日に輝くメラピ山
質問コーナー
質問1 インドネシアとはどんな国?
1万8千もの島々から成り立つ。面積は日本の約5倍。人口は2.2億人で世界第4位。
首都のジャカルタの人口はアジア一。
国土、人口、資源の面でASEAN最大の国。国民の約9割がイスラム教徒。世界最大
のイスラム教徒がいる国。
質問2 「ODA」って何?
「Official Development Assistance」の頭文字を取ったもので、「政府開発援助」と
訳されています。発展途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に役立つために行う、政府
による資金・技術提供による援助のことです。国民の税金が投入されており、2007年
の一般会計におけるODA予算は7293億円です。日本のODAは総額で世界のトップ
クラスにありますが、国内の財政事情を反映して、年々減少傾向にあります。2000年
までは世界一だったのですが、アメリカがトップになり、2006年にはイギリスに抜か
され、3位となっています。
質問3 なぜ、ODAが必要なの?日本国内にも困っている人はたくさんいるのに、税金を
使って日本以外の国をどうして援助するの?
だれもが持つ疑問であると思います。それを考えるためにも今回の視察がありました。
日本はたった一カ国で成り立っているわけではありません。さまざまな国から資源を輸入
し、また工業製品を輸出して経済発展を遂げてきたのです。かつては日本もODAの有償
資金協力で、東名高速道路や東海道新幹線を建設することができたのです。
世界にはいまだに安全な水を供給できず、貧困や伝染病に苦しんでいる国があります。
これらの国の貧困問題や社会不安は治安悪化につながり、それは日本にも多大な影響を及
ぼすと考えられます。資源の供給がストップしたり、テロや戦争に巻き込まれたりする
可能性もないとは言えません。人道的にも、また私達日本の安全な暮らしを守るために
も、援助は必要なのです。
